UFC(Ultimate Fighting Championship)は、総合格闘技(MMA)の世界で最も有名なプロモーション組織です。
1993年にアメリカで設立されて以来、過酷な戦いを繰り広げるファイターたちの舞台として、世界中のファンを魅了してきました。
この記事では、UFCの歴史を振り返り、人気ファイターについて紹介します。
UFCは、単なる格闘技のイベントから、グローバルなエンターテイメント産業へと進化を遂げました。
UFCの設立と初期の時代(1993年~2000年)
UFCは、1993年11月12日にコロラド州デンバーで開催されたUFC 1で幕を開けました。
創設者はビジネスマンのアート・デイビーとブラジリアン柔術のロリオン・グレイシーで、セマフォー・エンターテイメント・グループ(SEG)が主催しました。
このイベントは、さまざまな武道のスタイルを比較するトーナメント形式で、8人のファイターが1日で優勝者を決める過酷なものでした。
ルールは極めて緩く、目突きや噛みつきを除くほぼ「ノールール」状態で、体重クラスもなく、ファイターのサイズ差が激しい試合が目立ちました。
初代優勝者はロイス・グレイシーで、ブラジリアン柔術の寝技で3人を次々と極めました。
この勝利は、打撃中心の武道に対するグラップリングの有効性を証明し、UFCの基盤を築きました。
以降の初期イベントでは、ケン・シャムロックやマーク・コールマンなどのファイターが活躍。
UFC 2では股間攻撃が一時解禁されるなど、ルールの試行錯誤が続きましたが、暴力的な内容が社会問題化しました。
1996年、米上院議員ジョン・マケインがUFCのテープを視聴し、「人間の闘鶏」と非難。
50州のうち36州で禁止令が出され、イベント開催が困難になりました。
視聴率も低迷し、SEGは財政難に陥りました。
しかし、UFC 12(1997年)で体重クラスを導入し、UFC 14(1998年)でグローブ着用を義務化するなど、改革を進めました。
2000年のUFC 28では、ニュージャージー州の統一MMAルール(Unified Rules of Mixed Martial Arts)が初適用され、頭突きや膝蹴りの制限が加わりました。
これにより、MMAはスポーツとして認められ始めました。
この時代、UFCは国際展開も始め、1998年のUFC Brazilで南米初開催。
視聴者は86,000人を超えましたが、全体として低迷期でした。
総イベント数は約30回で、PPV(ペイパービュー)視聴者は数十万人規模でした。
Zuffa時代:プロフェッショナル化と爆発的人気(2001年~2016年)
2001年、ステーション・カジノスのフランクとロレンゾ・フェルティッタ兄弟が、ダナ・ホワイトの仲介でUFCを200万ドルで買収し、Zuffa LLCを設立しました。
これが転機です。
ホワイトは社長に就任し、規制対応を強化。ネバダ州の認可を得て、UFC 33(2001年)でPPV復帰を果たしました。
初期のZuffa時代は苦戦しましたが、2005年のリアリティ番組『The Ultimate Fighter』(TUF)がブレイクスルー。
スパイクTVで放送されたTUF 1の決勝戦(フォレスト・グリフィン vs. ステファン・ボンナー)は、視聴率1.9を記録し、UFCを救いました。
以降、TUFは国際版も展開され、ファイター発掘の場となりました。
PPV視聴者は急増し、UFC 66(2006年、ティト・オルティス vs. チャック・リデル)は100万を超えました。
Zuffaは競合買収を加速。
2006年にWEC(軽量級中心)を、2007年にPRIDE FC(日本人ファイター多数)を吸収し、ヴァンダレイ・シウバやノゲイラ兄弟をUFCに迎えました。
2011年にはStrikeforceを買収し、女性部門を強化。
2012年、ロン・ダ・ラウジーが初の女子王者となり、女子バンタム級が創設されました。
2014年には女子ストロー級が追加され、カルラ・エスパーザが初代王者です。
グローバル化も進み、UFC 129(2011年、カナダ)は5万5千人の観客を動員。
Foxとの7年契約(2011年)でテレビ露出が増え、UFC on Fox 1(2011年)は580万視聴者を集めました。
2016年、ZuffaはWME-IMG(現Endeavor)に40億ドルで売却。
総イベント数は500を超え、収益は6億ドル規模に達しました。
現代のUFC:グローバル企業への変貌(2017年~)
Endeavor傘下でUFCは急成長。
2018年のESPNとの5年300百万ドル契約で、PPVをストリーミング化。
2019年からESPN+独占となり、UFC 236以降はサブスクバンドルで提供されました。
2020年のCOVID-19禍では、無観客でUFC 249を開催し、「必須サービス」として継続。
2021年のUFC 261で満員復帰しました。
2023年、WWEと合併しTKO Group Holdingsを形成(総額121億ドル)。
2025年6月、UFC BJJ(ブラジリアン柔術部門)を新設し、UFC 317で初イベントを開催。
8月にはParamountとの7年77億ドル契約を締結し、PPVを廃止してストリーミング中心にシフトしました。
現在、11階級(男子8、女子3)で578人の契約ファイターを擁し、収益は14億ドル(2024年)です。
ラスベガスのUFC Apex(2019年開設)で小規模イベントを開催し、パフォーマンス研究所でトレーニング支援を強化しています。
ただし、独占禁止法訴訟が課題。
2025年2月にLe vs. Zuffaが3億7500万ドルで和解しましたが、5月には新たな訴訟が発生。
ルール改正も続き、2024年の新グローブ導入(怪我防止)がファイターの不満で撤回されました。
人気ファイター
歴史を彩るスターたちUFCの人気は、魅力的なファイターに支えられています。
全時代を通じて、ジョン・ジョーンズ、ジョルジュ・サンピエール、アンデウソン・シウバ、デメトリアス・ジョンソンがトップ10にランクイン。
ジョーンズはライトヘビー級で最多防衛(11回)を誇り、2023年にヘビー級転向後も殿堂入り候補です。
サンピエールはウェルター級とミドル級の2階級制覇、完璧なレスリングで「GSP」と呼ばれ、引退後も影響力大。
シウバはミドル級で16連勝の記録を持ち、KO劇でファンを沸かせました。
ジョンソンはフライ級で11連続防衛の史上最強王者です。
女性ではアマンダ・ヌネスがバンタム級とフェザー級の2階級王者で、Ronda Rouseyのライバルとして人気。
Rouseyは2012年のデビューで女子MMAをメインストリーム化し、UFCの顔となりました。
コナー・マクレガーはアイルランドのスターで、フェザー級とライト級制覇後、ボクシング挑戦も。
PPV視聴者数で歴代最多を更新し、現在もInstagramフォロワーでトップ。
ハビブ・ヌルマゴメドフはライト級で29勝0敗の不敗王者。
レスリングとサンボの圧倒的グラウンドで、2020年引退後も伝説。
ジョゼ・アルドはフェザー級の元王者で、ブラジルの象徴。
キリヤン・ティルやダニエル・コーミアも、KO力とカリスマでファンを集めました。
殿堂入り組にはロビー・ローラー、アマンダ・ヌネス、ショーグン・ルア、ヨアンナ・イェンジェイチック、フランキー・エドガーらが名を連ねます。
近年の人気ファイターは、イスラム・マカチェフ(ライト級王者)、イリア・トプリア(新王者)、アレックス・ペレイラ(ライトヘビー級王者)、ハマト・チマエフ、メラブ・ドゥヴァリシビリ(バンタム級王者)が上位。
トプリアの2025年6月UFC 317優勝は話題沸騰で、ESPNのP4Pランキング1位。
ペレイラのKO劇は視聴率を押し上げ、チマエフの無敗記録(13勝0敗)は期待の的です。
女子ではヴァレンティナ・シェフチェンコとカイラ・ハリソンが注目されています。
これらのファイターは、技術だけでなくパーソナリティでUFCを支え、2025年の半期アワードではドゥヴァリシビリとトプリアがファイター・オブ・ザ・イヤー候補です。
日本人ファイターでは、平良達郎選手が勝ち星を重ね、ベテランの堀口恭司選手も11月に再戦予定。
2連敗と崖っぷちに追い込まれた朝倉海選手は、ライジンでチャンピオンとなったバンダム級へ戻して再参戦するとアナウンスしています。
最後に
UFCは、30年以上で700以上のイベントを開催し、MMAを世界スポーツに押し上げました。
未来はストリーミング時代と新部門でさらに広がるでしょう。
ファンの情熱が、UFCの歴史を紡ぎ続けます。
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